第二次性徴変性症 3
・女の子初心者


「せっかくだから試着しない?ブラジャー」
「えっ」
「付け方とか教えた方がいいかもね、スポブラで済むかなって思ってはいたけど」
戸惑う玲を余所に仁は個室から出た、一応個室には仕切りやベット周囲を覆うカーテンが用意されているが完全に視界に入らない方がいいだろう。娘三人を持つ父親の行動だ……自分の所は長男の社を設けた後も変性症の事を考えて妻である美津子と頑張ったが立て続けに娘二人に……後は訳有りで妻の姉が産んだ乳児を養女として引き取っている。社が変性症を発症しなかった事は仁としても安堵はしていた。変性症の影響で一人っ子よりも複数の子供を設ける傾向が続いており日本政府としては少子化に幾度か歯止めがかかりつつある……とは言え変性症は本人の意向に関係なく女性化するので国によっては忌々しき事態と言う、特に兵役義務がある所では新兵訓練も配慮する事態に……。
「まあ大変な事になるかな」
弟の将は子煩悩故に時折暴走していたからなぁ……自分もそうであるが。
「おう、仁……来ておったか」
声の主に仁はコクっと頷く、スキンヘットにして厳つい男は甚平を着こなしている……一目見れば初老であってもおっかいない人である、彼こそ日比谷道場の主である日比谷 寅一であり空手の世界“虎殺し”の渾名で有名な方である。最もヤクザを初めとして地元のワルらにも知られているが時折彼の正体を知らずに喧嘩を吹っ掛けたバカが病院に担ぎこまれる事が今でもあると言う。
「日比谷師範代、ご無沙汰してます。親父が様子見てこいといさ……」
仁は軽く頭を下げるとスマホのLトークでファミリーグループにメッセージを送信するとドアが開いた。
「師範代……それに新井さんも」
リーナの声に日比谷道場の門下生の成人組の新井 久留巳も姿を見せる。



「確かにこれは……血が流れるね、将さんなら間違いなく」
「うむ、わしの息子(意味深)が死んでおってたすかったわ……」
病人用の衣類でも分かる玲の胸のボリュームを見た二人は言葉を選んでの感想だが玲は戸惑っているのも分かる。
「自分としては空手を続けたいです」
「よかろう、寧ろそうしておかないと危ない……警察も病院通いが必要な容疑者を送られてはたまらんじゃろ。将も今じゃ家庭持ちじゃ、会社も困るだろうし」
仁も将も学生時代は知らぬ者は居ないツワモノであり、族やヤンキーらを相手に拳を交えた猛者であるが同時に日比谷道場の門下生だ、まあ族やらヤンキーにお礼参りも数度受けるも返り討ちにして交番に放り込んだ事もある位、最もこの程度は寅一も若い頃には年に数回以上はしている。
「新井さん、胸を引き締める方法ってないですか?」
「あるわよ、あとで教えるから。まあ逆の方法も知っているし」
久留巳の本職はエクササイズジム勤めのトレーナー社員、空手を習っているのも護身用に過ぎない……。
「久留巳さんっ、こいつ何時まで抑えたら大丈夫ですかぁ?」
「もういいわよ」
玲が廊下に出ると女子高生制服姿の上原 美香が玲の幼馴染である日比谷 高士を寝技で抑え込んでいた。柔道もしており男性も中学生程度なら難なく失神させる事も出来る、実際昨年道場内でそうなった事もあるので玲は苦笑するしかない。
「……勢い余って“暴発”させないでねぇ。ダメージでかいから」
「は~~い」
久留巳の意味深な言葉に仁は苦笑、警察官を定年退職した警備員の男性も感心するほどの見事な抑え込みである事は言うまでも無い。



「正兄のLトークで呟いた理由分かった」
「……高士間接外そうか?丁度研修医の教材になりそうだし」
美香の殺気に満ち溢れた言葉に仁は首を横に振っておく。アレは痛いのだ。
「全く、恋人の肝臓撃ち喰らってもコレか……」
仁も呆れるがここまで胸が育つと数日前までは弟であっても切り替えられた正弘の若さには感心するしかない。事の善悪を除けばの話であるが……。
「所で感度は?」
「物凄く良いと思いますよ」
初めてブラを付けた際の玲の表情は色っぽくトスカさんが調整する姿は百合の気が無い香でも刺激が強過ぎると思える程、何しろスマホが水平に置けるサイズとなると中々無い。
「玲、女性でも狙ってくる事はあるけど顔は避けた方はいいわ、女って腹に一発の方が利くから……」
「「(物騒な世の中だ)」」
久留巳の言葉を理解した仁と高士は苦笑するしかなかった。
「そうだ、先生から……選択科目の変更あるからね」
「あっ、じゃあ体育グループ学習も変わるんだ」
三人が通う中学校では体育授業の一つにグループ学習があり男子学生は柔道、女子学生は創作ダンスになる。渡されたプリントの束は殆どがそのグループ学習に関する事である。
「玲さんはリーナと一緒のグループになるけどいいかな?」
「はい」
「良かった、この分だと水泳授業も大丈夫ね」
「えっ」
「多分測り直しになるから」
「……マジ?」
「(水泳部員が勧誘してきた腕前持ちなのに……)」
実は入院する前の最後の登校日に水泳の授業があり、玲の速さは誰もが驚いた。兄の影響で空手と同時期に始めたのが水泳であり小学校入学時には25mプールを泳ぎ切る事が出来ていた。香は別の校区だったが同じ水泳教室に通っているので分かってはいたが。
「あっ、期末テスト答案もあるんだ」
「主要教科平均80点……これならダンスの授業も追いつけるわよ」
リーナの表情が死んだ魚の眼を持った笑顔になる、本人はこの授業がある事を知ると嫌がっていたなぁ……寧ろ柔道に興味があったけど女子学生が普通の体育で柔道がNGなのは中学生でも分かる一般的な常識を照らし合わせたら理解は出来る、ただリーナも平均的な女子中学生と比較すれば胸が豊満な方なので玲としてはお勧めしなかった。
「暫く騒がしくなるわねコレ」
香は変性症の事は知識で知っていたがよもや自分の同級生がそうなるとは思いもしなかった。



「セカンドバースディ?」
「変性症で女性になった日を誕生日として見る考え方ね」
程無くして香やトスカさんや日比谷師範代は去っており、伯父の仁も仕事があるので既に退室した。
「最もこれは商戦関連の業界用語らしいけど、中には好んで女の子になった訳でもないから批判もあるわね」
香からお見舞いの品として受け取ったティーンズ雑誌に記事として出ている時点で察したが……父親の実家が運送業をしているので関係はある訳だ。
「既に雛人形は神田川のお祖父さんが買っているし、姿見も義姉(この場合は仁の妻)が用意しているし……本当に用意はいいわねぇ」
仁の妻の実家がフルオーダーの家具や店舗用ショーケース製作を営む所で時には店舗からまだ使えるのに引き取りを受ける事もある、どうも従業員の技術向上で修繕しているらしく実際玲の実家も幾つかはリサイクルされた家具がある事は知ってはいたが……。
kyouske
2018年11月08日(木) 12時01分13秒 公開
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