第二次性徴変性症 1
・発覚


「楠瀬、再検査な」
担任教師である熊川先生から封筒を渡される。その封筒には大学付属病院の住所が印字されていた。初夏を迎え中学生活に慣れてきたその日の放課後に担任が呼び出された。朝一番に健康診断の結果を示された封筒が配れたが……。
「えっ……」
「明日にも親御さんと共に行くようにな……出席扱いだ、楊。ノート頼むな」
「はい」
幼馴染の楊 リーナはその封筒を見て表情が曇る。
「(間違いよね……)」
その願いは叶う筈は無い事は分かっている、リーナは直ぐにスマホを操作する。彼に兆候は無かった筈だ。



「……変性症です」
「はい?」
「第二次性徴異常症例の一つで最も有名な“変性症”、即ち性別が変わる症例」
「で、でも自分何ともないですよ!!!夢精が多いとか、男なのに胸が出てくるとか……」
「個人差があるから今の様な前兆が全員に起こるとは限らない。ウィルス検査で見つかったよ」
傍にいる両親も唖然としているだろう。何時頃から不明だが毎年都道府県から数人の少年が発症する謎の症例……それが自分の息子になっていたのだから。
「特別法によりこのまま入院して貰います。ウィルスは空気感染は起こさない事は既に実証されてますが……発症すると仮死状態に近くなりこの時に心臓を“無理矢理普通の状態にすると”最悪死亡と言う事例も起きてますので、これを防ぐための処置です。朝倉さん入院の手続きを」
医者が口籠るも無理は無い、性行為でのウィルス感染は確認されてないがあり得るのだ。女性看護士が両親を診察室から連れ出した。
「女性化は止める事は出来ない、男性に戻る手術は出来るが生殖機能までは再生出来ない……これが今の医学の限度と言う事は理解を……」
「……」
今まで入院する程の病気はした事は無い自分が変性症になるのは晴天の霹靂だ、楠瀬 玲は唖然としていた。確かに小学校の“特別授業“の際に配れたパンフレットには変性症の事は記載されていたが実感しなかった。


程無くして、専用病棟にある個室に通される。シックなビジネスホテルと言った感もあるが一般入院患者と隔離するのは諸事情に寄りと言う事だ。
「えっと……下着が女性の……」
用意された入院患者用の衣類一式には女性用下着が用意されていた。
「これは性同一障害を防ぐためよ、精神的ケアが充実しなかったから女性化しても心や精神が男性のままで不妊手術と男性化手術に踏み切った人もいるのよ……政府としてはシングルマザーでも構わないから国民を増やしてほしいのが本音ね」
「……はい?」
「初めまして、カウンセラーの道明寺 晴菜です。楠瀬さんの担当になります」
小柄らしく玲とほぼ同じ背丈で服装次第じゃ学生に成り済ませる、が白衣を身に纏っているので医者である事は分かる。
「私も変性症で女性になったからね、高校生の時に」
「!!!」
「その時に背丈も今の様になったのよ」
戸惑う玲を余所に彼女は言う。
「主治医から説明通りに今の医学では男性を完全に戻せない、戻せたらそれこそノーベル賞受賞もあり得る程ね……海外じゃ臨床試験して犠牲者も出たの……」
日本政府としては過去に幾度か起きている薬害を考えると慎重にならざる得ない、道明寺も医療に身を投じて分かった事だが日本政府の対応はある意味では正しいのだ。やたら日本を追い越そうとした隣国の半島国家なんて出鱈目の論文のお陰で三桁の犠牲者を出しており、出生率低下がダントツになった。
「楠瀬さん、貴方には研究用資料を提出して貰う義務が生じます」
「???」
「精液よ……勿論自然に出してもらう為にね」
聞き覚えがある声に玲は声が出なかった。リーナが何故か看護士の服装をして姿を現したのだ。
「彼女は“第二次性徴異常性欲症”なの……特例的に彼女と性行為が出来るのよ」
道明寺はそそくさと部屋を出た。その途端に看護士の服装を脱ぎ始めるリーナの眼は異常な程に色っぽい。



      高士、ごめん……これ避けられそうもないわ


気が付いたらリーナを抱いていた、自分も裸になって。





kyouske
2018年11月03日(土) 01時19分40秒 公開
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