第二次性徴変性症 24
・訳アリ転入生


玲は道具を戻す為に自宅へと戻る……台所にある調理器具は母親が管理しているからだ。
「あら、もう終わったの?カンパチの下ろし」
「うん……ちゃんと専門家に見て貰ったから大丈夫だよ」
母は分かっているらしく言う。
「あ~~魚屋の……ふうん大丈夫だった?」
「営業スマイルだったし……」
父の営業スマイルでいちゃもん付けた職人やヤクザが身の危険を感じた事があるらしい……玲も小学校時代に他校の子と喧嘩に発展し相手側に非があるのに如何にも被害者面した保護者を黙らせた事もある。流石に仲介した双方の教師も怖かったらしい。
「肴大丈夫かしら……」
母親はレシピを見つつもご機嫌である。



翌朝、何時のも用にランニングして日比谷道場に朝稽古に挑む。そこにはある少女が居た。胴着に身を包み基礎をしており、高坂さんが指導している
「広海さん……」
玲に気がついた少女は頭を下げて言う。
「今日からよろしくね」
「はい」
玲としては後輩が出来た感がある。
「あっ!」
朝稽古に来た高校生のお姉さん方も広海に気がついて思わず声を上げた。桑原は直ぐに察した。



一時間後、朝稽古の終了時の挨拶にて宮島 広海が紹介された。
「引っ越したばかりなので……よろしくお願いします」
高校生のお兄さんらの眼が真剣だが変性症の事は言わない方がいいだろう……玲は薄ら笑いをするしかなかったが横に居た高校生の一人が気が付く。
「宮島って……まさか」
浦島 江は隣に居た玲の表情を見て言う。高校生組では比較的大人でバカな事はしない。
「江先輩、そう言う事です……彼女の正体は先輩の推理通りです、今はそっとしておいてください」
小声で応じた玲の表情は複雑、あのイケメンアイドル少年がこんなに美少女になるのか……彼も薄ら笑いをする、最も今声かけたら桑原らに金的をされかねない、あの痛さは昔から知っているのだ。頭を下げ立ち上がる……。
「高校は?」
「確か……斎藤先生の所の……」
「三沢高か!ヘルハウンドと同じ所かぁ」
浦島は天を仰いだ……美少女三人転入だが何れも手出し不可能……犠牲者は出る。
「浦島……まあそう言う事でよろしくな」
斎藤先生は委細承知と言う表情で浦島に言う。
「勘弁してよぉ……はぁ」
空手部顧問の言葉に高一にして主将を務める彼はガクと来るが数学が苦手な一面もあり無碍に出来なかった。
「桑島、知っていたな」
「うん……ちとお婆がシャイニング会長と面識があるから東京行った際に直々に頭下げられて……」
確かに彼女の祖母は茶道の家元で何かと監修依頼で東京に赴く事がある。



数時間後、玲は母親と共に神田川家に着く。大女将でも祖母が待っていた。
「ただいま」
「お帰りなさい……日菜子。さて持って来た糠床出しなさい」
瞬時にして火花が見えた……玲と兄嫁である神田川 順子もたじろぐ程殺気に満ち溢れている。タッパーに入った糠床を見て匂いを嗅いでから祖母は中にあるキュウリを齧る。
「……うんよく面倒を見ているわね……」
「これ、私のオリジナル……」
「二人とも玄関で何をしているんだよ……おっ、玲か……うん、若いもんに見せたくないな」
次男の颯が糠床から茄子を取り出し食べる。
「颯、店は?」
「仕込みは済んだよ……兄貴は?」
神田川 朱雀が奥から顔を出す……精悍で如何にも料理人と云う感を出す。
「日菜子か……アレ?」
「玲です」
「……変性症になった」
颯の言葉に思い出したように云う。
「!ああっ……親父がやたらひな人形どうするかで騒いでいたな」
朱雀伯父さんは苦笑して言う。
「背中流してくれるかい?」
その瞬間、祖母でもある大女将と妹の日菜子の殺気は凄かったが妻の順子さんは眼が細くなる。淀みに似た雰囲気に次男もたじろぐ。
「冗談だ」
板前とは言え可也締まった肉体である事は玲も知っていた。



順子さんの機嫌が落ち付いた所で玲は着付けをして貰っていた。
「うんこれでよし……今年は綺麗所が揃っているから撮影しがいあるわぁ」
順子さんはカメラを用意する……こうしてパンフやお得意様に配るカレンダーに掲載される訳で日菜子も結婚前はモデルを務めた事もあり、見合い話が舞い込んできたもある。
「ほどほどにね」
そして順子さんの趣味はカメラである……何でも父親が仕事で使っていた物の一つらしく、茅野従姉さんがビックリしていたなぁ……。
「おっ……玲なのか」
「本当かよ……」
順子さんの息子で共に料理人として余所の店に修業中の長男、神田川 隆一に次男の神田川
隆二……確か兄と近い年齢だ。共に祖父と縁がある料亭にて修業中であるが共に板長がお盆位は帰省させるという。
「襲ったらダメよ……玲ちゃん遠慮無しにシメていいから」
順子さんの言葉に従兄二名が後ずさりする。
「玲……うぁあああああっ!物凄くかわいいいっ!お母さん!セットさせて!!!!」
そして長女の冴さんは東京にて美容専門校に通いつつも有名な美容院でバイトしている。
「はいはい……あんたとちるんじゃないよ」
姿見の前に座らせられた玲に冴が髪の毛を見て唾を飲み込む。
「ちゃんとしているわね……よし、やるぞぞおお!」
順子さんはヤレヤレと思いつつも微笑ましい表情になる。
「あっ!玲……」
持っていたカバンをドサッと落とした少女がワナワナとしている。
「あら来たわね」
颯の妻の妹夫婦の長女である瞳は直ぐに駆け寄る。大阪の大学に進学しており玲が変性症になった事はメールで知っていた。
「……瞳ちゃん、狙っていたもんねぇ……初物」
冴は瞳に向かって意味深な言葉を言う。
「ちっ……あの娘に喰われたか」
こんな事なら昨年決行していればと言う後悔の表情を見せ、玲は薄ら笑いをする。
「……玲さん。御無沙汰してます」
颯の妻の妹夫婦の次女である鼎が深く頭を下げる、高校一年生でありおっとりとした性格だ。
「ほらみんな着替えて……冴も早くね」
冴のおかげで玲も和装が似合う様にセットして貰えた。


十分後、冴も瞳も和装になり撮影を始める。昔は馴染みの写真館から出張で撮影していたがデジカメやらの普及で消えつつある……その写真館も後継者不足で休業していたが昨年になってチェーン店系写真館が使用する事になる。何でも創業者が一目で写真館を気に入り所有者に必死になって交渉したらしく改修費用まで出したと言う。楠瀬運輸も資材や機材輸送にしたので玲も知っている。
「いやはや、綺麗なお嬢さん達で……アレ?確か三人だったような」
昨年初めて店内パンフの撮影した担当社員は戸惑うも直ぐに理解した。
「増えたんですね」
「ええ……義妹の」
やはり家族写真を毎年撮影している社員ではよくある話らしい……。
「お見合い写真のパンフ渡しておいた方が……」
日菜子は首を横に振って社員に言う。
「多分、必要ないと思うから……」
結婚が早くなりそうなのは予感はしている……。


撮影も済み順子さんはランチ営業の為に店の方へ……そして玲達はその間に祖母の元で神田川家の御盆準備に取り掛かる。主に掃除であるが……。
「兄さん、廊下の雑巾掛け終わったよ」
「OK……他は」
従姉妹らの様子を見に行く……昨年の大掃除では手が回らなかった倉庫に行く。法令上使用できなくなった鉄道貨物コンテナを補修し楠瀬運輸が運送と設置、その後出入りしている植木屋の若旦那が旨い具合に植栽で隠した。
「あっ、玲!」
従姉らはニッとする。手には何かの衣類が入った衣装ケースが……ちょうどお昼ができたのでそのまま持っていく事にした。


「アラ懐かしい……」
お昼ごはんを食べ終えた日菜子はほほ笑むのも無理はない……かつて使っていたセーラー服に体操服だ。
「せっかくだし……うん」
玲を捕まえると隣の部屋に行く。数分後……夏季セーラー服を着た玲の姿を撮影する面々……何しろ日菜子の学び舎の中学も高校もセーラー服を廃止したからだ。
「日菜子、店の方に……松海先生が」
「えっ!じゃあ玲も!!」
スマホから母の呼び出しに玲を引っ張っていく。


「まあ、じゃあ……娘さんになったわけね」
母の恩師である松海先生は以前数回会っているので玲の事は知っている。御座敷にて品が良く如何にもベテランと云うオーラを出す女性教師はにこやかに云う。
「母(日菜子)にそっくり、とはならなかったわね」
「はい……胸が有り過ぎて」
最早自虐ネタになりつつある玲の胸……母親のセーラー服では街中を歩けばトラブルにもなりかねない。
「松海先生」
「あら。塔坂 鼎さん……確か伯母の嫁ぎ先だったわね……」
「はい」
聞けば今は教頭を務めており、それなりに教育委員会との会食もある……今回は少し奮発したらしい。相手は急用ができてしまい先に退席、大女将が気を利かせたのである。
「高校の事は考えてますか?」
「玲の事ですから女子高は……」
避けた方が賢明な判断ともいえる。今の環境だと……玲も共学のほうが慣れている。
「教頭先生、こんな胸を見たら女でも争奪戦になりかねませんよ、ユリの花粉って落ちにくいですから……」
遠い目になる鼎に教頭も苦笑する。春先からゴールデンウィークの辺りは大変な事になっていたのだ。本人は自覚しては無いがなぜか同性にモテるのである……飛びぬけて美人でもないのに……。
「そうだったわね……よくすんなりと静まったわね?」
「まあ、異性がお好みだったんでしょうね……」
鼎の言葉に松海は理解した……彼女が通う女子高はかなりの美人揃いである。当然交際したいがメールアドレスを知るだけでも苦労するが鼎は相手を見定めたうえで紹介したのだ……松海も唖然としたが百合に走ってしまいがちな環境では仕方ない。
「で、何処まで進んだの?もう布団の中で絡んでいるのかしら?仕込みは時期が重要よ……」
日菜子の身も蓋もない言葉に鼎は苦笑する。
「ア~カレトハソノ……」
この分だと海外にて赴任している夫婦が祖父母になる日も近い。




・美容院へGO


松海先生との会話も弾むも彼女も予定があるらしく後にする……どうもお会計は相手が支払ったらしい。
「玲、美容院に行くわよ」
「へ……」
「まさか自己流で毛先整えるつもり?」
玲は頷くと日菜子は両肩をつかむ!
「それはよしなさい!」
母親の気迫に圧されてそのまま外出する事になる。



「うぁああああっ!なつかしいぃぃいいいっ!」
母親が学生時代から世話になっている美容院に声が響く。玲のセーラー服姿を見た店主である戌瀬 まどかは思わずスマホを取り出して撮影する。彼女の実家でもあり何度かカットモデルになった親しい方である。
「まさか、玲君が女の子になっていたなんて……日菜子ぉ、よかったわねぇ」
「うん……胸が有り過ぎてね」
遠い目になる日菜子にまどかは分かる気がした。あまりの胸のボリュームに普通のセーラー服でもいやらしく見える。確かコレ高校の時だったのねと言う確認はしない。
「今日は毛先のカットとお手入れ……」
「はい」
バッサリカットとでもいいだせば反対されるだろう。
「まどか、大丈夫なの?」
「何が?」
「変性症……確かまだお年頃だったよね?」
「一応セーフ……まあ構えていただけに肩透かしだったわねぇ。18歳になったから……まあその年齢での発症事例もあるから油断しないようにしておく」
会話しつつも玲の髪の毛をカットする。
「これだと本当に色々としたくなるわぁ……」
「そうよね……男二人だったけ?」
「そっ、下の子が18歳で無事に高校卒業出来そうだし……上の子供は暫くは好きにさせておくわよ……」
「何が“好きにさせておく”だよ……」
店の玄関にてため息交じりに言う男性は一礼する。大きなリュックサックには買い物袋がぶら下がるほどパンパンである。
「久しぶり、まー君」
「日菜子さん……あれ?娘さん?」
「玲君よ……ほら」
「!!!!!」
思わず持っていたコンビニアイスコーヒーを落としそうになる男性。古めかしいセーラー服を持ち上げる程の胸、幼さでも美人になる事は間違いない……元男でもここまで美人になればほっておく男の方が敗者だ!ロリコンと呼ばれても悔いはない。
「……」
「手ごわいわよ……匡(まさし)、玲ちゃんまだ空手続けているから強引にするとグーパンチされるわよ。日比谷道場の門下生の怖さは知っているよね?」
「……ああ」
匡は後ろ髪を引かれる思いで奥へと消える。
「確か大学二年だったけ?」
「ええ、変なサークルに入らずによかったわぁ……正弘君は就職したっけ?」
「そうよ、楠瀬運輸にね……」
「大学に進学出来たんでしょ?」
「あの子ね……“在学中に就職先選べる程起用じゃない”って言ってね……」
日菜子は遠い目になるが仕方ない事だ、実際伯父も祖父も喜んでいたし……。
「お袋!受験勉強の息抜きって言って買い物まで押しつけ……あっ」
匡とは別の買い物袋に回覧板を持って来た少年は慌てて会釈する。
「匠君、久しぶり」
「はっ、はい!?その子は?」
「玲君よ……変性症になったばかりで初めての美容院」
ちょうどカットを終えてシャンプーへと移る所だったのでランドセルを背負ってもおかしくない身長に爆乳と呼ぶにふさわしいサイズの胸……更に夏服セーラー服に美人と来れば見惚れる。
「なっ!」
「あ、初めてよね……あんた達の世代じゃ」
「……そうだけど、って!」
「まー君も似たような反応したし……うん兄弟ね」
微笑む日菜子とまどかに玲はうすら笑いをする。
「こんな事なら空手続けていればよかったねぇ、匠」
彼も匡も日比谷道場で学んでいたが中学進学時に辞めている。
「あいつら……黙っていたな」
匠は直ぐに今でも道場に通う友人らのグループのLトークに入力しようとしたが色々と血を見そうになるので止めた。彼だって楠瀬家のすごさは知っている。
「受験勉強行き詰まったら道場に来なさい、大学生とか先生もいるし」
実際兄も高校受験勉強で気分転換に顔を出した事もある。
「そうね、ついでに二人とも根性叩きなおして貰って、日比谷さんに頼もうかしら」
まどかが言う日比谷さんとは高士の父親であり、師範代の息子とあってその強さは幾多の伝説を残し地元の悪らに脈々と語れ、当然地元警察署にも古参なら一つ二つ実話がある位だ。
「じゃ、シャンプーするから……仰向けにするけど大丈夫?」
そう玲は床屋を利用していた時はうつ伏せにするスタイルだが、女性になると仰向けになる……即ち美容師の胸に顔が当たるのだ。
「(まっ、リーナが焼く訳じゃないからいいかっ)」
「あれ?まどかさん、予約ありましたけ?」
洗髪台に座って準備が終えた所で若い女性の声がした。
「飛び込みよ、ちょうど時間もあったし……スーちゃんは休憩のままでいいわよ」
「……まどかさん、彼女は?」
「楠瀬 玲、次男だったけどこの間女性になったのよ。因みに着用している制服は私の高校時代のモノ」
「仕上がったらデジカメいいすっか!あのポラライトプリンターもありますから!」
スーちゃんの事、三津川 菫は直ぐに用意を始めた。以前は東京でも名がある美容院かヘアサロンに勤めていたが故あって故郷に戻り、この美容院に転がり込んだ。東京時代から使っているので少しボロボロである。
「いいわよ……アレ?バカ息子二人は?」
「それならそっと店出てますよ」
「まあ、いいわ……久しぶりにアレやりたいし」
「?」
仰向けになっている玲はキョトンする。
「よくやったわね……息子二人にスポーツ刈り」
日菜子は呆れた様に言う、本当にまどかはキレると何をするか分からないのは学生時代から知っている日菜子でも慣れない。
「どう?頭痒いところは?」
「無いです」
やはり胸が顔に当たるのが気になるが……同性でもキツいかもしれない。ただまどかさんの場合、とても子供二人産んだとは思えないほど若々しく見える。
「あら、日菜子ちゃん」
「ご無沙汰してます」
この美容院の経営者である宇都宮 仙はニコッとする。ちょうど老人ホームでの出張から戻っており、ちょうどその先で娘婿と合流している。
「玲ちゃんの初カットね……まどか、ちゃんとやりなさいよ」
「はい」
まどかも嬉しそうに頷く。



数時間後、すべて終了して日菜子は料金を支払う。菫は満足して撮影した画像を見ており、玲はポラマイトを数枚をもらっていた。
「まだ中学生だから年に数回ね」
「うん」
学割があるとは言えその値段を見た玲も納得する。
kyouske
2018年08月21日(火) 01時43分29秒 公開
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