第二次性徴 変性症8
・従姉妹

茅野従姉は持ってきたノートPCで掲示板運営会社と各校の生徒指導のPCに玲の画像に関してクレームを送信、万が一犯罪にもなった時の責任問題になるので直ぐに動く筈だ。
「楠瀬って言う苗字も中々ないからねぇ、これ大変な事になるわよ……」
「もうここまで拡散していたの?本当にこまったもんねぇ」
リーナが私服に着替え終えて自宅に来るなり言う。双方とも共働きなので日比谷の所か家に預けられる事が多かった。
「あら、リーヤちゃん。玲の事でお世話になって……美味しかったでしょ?」
茅野従姉が思わず宇佐美従妹の耳を塞ぐが彼女は言葉の意味を知らないようだ。綾音さんは清楚な表情とは裏腹に可也の面食いで学生時代は同世代を喰っていたが成人後は所謂オジサマから中学生以下までと極端になっているらしい……兄も過去には関係があったようで。
「ええ、最後まで頂きましたわ」
茅野従姉は真っ青な顔になるのも無理はない……リーヤのドヤ顔に綾音従姉の表情は強張っているからだ。
「(綾音従姉ってこんな感じって?)」
玲はそんな顔になると茅野従姉は頷く……この分だと兄も苦労しただろう。
「それよりも綾野姉も例の件で来たんじゃないの?」
「例の件?」
「アートトラックのイベント……」
そう従姉妹らの両親、即ち伯父夫婦は運送会社を経営しておりトラックも個性的にドレスアップされている。昔はデコトラと呼称していたが今は欧州のトラックの様にペイントやライトでのドレスアップが主流になりつつある。拍車をかけたのが大型トラック/トレーラーヘットに“外車”を選ぶユーザーが増え、全て欧州車である……これは日本の道路事情や自動車各種の法律に適合しておりサイズも日本車と変わらない。伯父の楠瀬社長の“相棒(=愛車)”も一昨年からスカニアのトレーラーヘットに変更している。スカニアはボルボと同じくスウェーデンに拠点を置くトラック/バスメーカーで欧州を中心に市場を展開していたが日本には近年進出している。
「今年は他のカスタムカーイベントと合同でする事になったんですよ、専門誌合同主催で」
「あらまぁ」
こう見えて玲の母親はライターをしており、今でも在宅でしているが時折は取材もする……。
「分かったわ……玲も連れて行くから」
「是非」
玲に拒否権は無い……無論父も参加するだろう。


玲の部屋は至ってシンプル……だったのは入院する前の話で今は退院祝いにクラスメートから送られてきたヌイグルミが数個に伯父夫婦からは化粧台が送られていた。
「はぁ」
一旦解放されたので制服の夏用ブラウスのみになった玲はその化粧台の鏡をみる。
「こんな胸だとなぁ」
引き締めないといけない、背も伸ばしたい……玲は従姉らを見て決めた。
「でも……あの人なら……」
玲はずっと橘の事を考えていた。伯父夫婦から送られてきた化粧台にある姿見の前に立って見る。身長は多少縮んだが直ぐに成長が始まるので心配はないがブラウス越しでも分かるこのたわわに実ってしまった胸に凹凸が無くなった股間を見ると改めて女性になった事を自覚した。
「入るよ~~」
「リーヤ……どうしたの?」
「久しぶりに見たくなったの」
「そうか……初潮になった時に」
リーヤが初潮になったのは小学四年生の時だ、下校時に彼女は真っ青になって太ももに鮮血が流れていた事に気がついた玲は慌てて自分の部屋に入れて寝かせた。そして買い物帰った母親を捕まえて直ぐに状況を話すと母親は少し驚いた後に処置をしてくれた……その日は彼女の両親は仕事の追い込みで不在であったが夕飯にお赤飯になり、第二次性徴の事を教えてくれた……その日からリーヤは客間で寝るようになる。
「女の子って大変だよね」
「私の場合は特にね……」
リーヤはその後大学病院にて“第二次性徴異常発育症”と認定された……どうも小学三年生の頃から当時男の子であった玲の性器を見て発情していた事は母が目撃しており制止した事もある。この事はこの前の入院時に初めて知った。
「玲は好きなの……橘さんの事」
「うん」
「……じゃあ応援してあげる」
「リーヤ、ごめん」
「あの時分かっていたの……もうすぐ発症するって、でもちゃんと見届けられたし……」
彼女は背後から顔を埋める。男の面影を無くした胸ではなく……まだ背中の方が残っているのだろう。
「泣かせて……」
玲はこの時初めて自分に恋をしていた事を知った……きっと結婚したいと願っていたのだろう。背中に彼女の涙を感じた……失恋ってこんな形もあるのかって……。


「で、固まってしまったと」
漸く落ち着いたリーヤは部屋を出ようとしてドアを開けると高士が固まっていた。
「その……まさか、百合って言う奴を」
「ちがうぁわあああっ!」
彼の鳩尾に渾身の突きが喰い高士はうつ伏せになり倒れた。
「バカ……私は普通よ」
リーヤはそのまま一階へと降りた。
「高士、ベットでねる?」
「いい、床の上で……」
こんな事は今までよくあったので玲のベットで寝る事は多々あったが……女性になった玲を考えるとこれからはむやみに使う事は避けたかった訳……だが玲は高士の気持ちを知らずに抱えるなりベットに寝かせる。当然胸が自分の体と接してしまう。
「!!!」
高士は驚くが言葉がみつからない。
「リーヤの事は任せて横になって……後で洗面器持って来るから」
玲はワンピースに着替えており一階へと降りる。



居間に戻るとあの時の刑事さんが来ており、母親が麦茶を出していた
「犯人一味は全員送検しました……検察にね」
「全員……家裁ではなく?」
「もはや家裁じゃ手に負えない罪状になりましてね……高校生も居たのですが、退学処分……堀の内側の学校に通う事になりましたとさ」
相棒である若手刑事はボソッと言う。
「あの……」
「もう一人の方も先程報告を終えているよ」
「ありがとうございます」
「まあ犯人らが所属している半グレ連中には気を付けてください。何にせよ、楠瀬の名を知らない者ばかりでしてね……ちと釘を刺してはますが、様子から見てやかましいジジィの言う事なぞ馬耳東風ですな」
刑事が苦笑すると若手刑事がため息をつく。
「では、これで……お穣さん、一度署でしている稽古でも来てみるかい?日比野の師範代ならウチの署長との竹馬の友だ」
「はい」
「おやっさん……」


刑事二人は玄関で会釈して夏の昼下がりの住宅街へと消えて行く。
「さてと、高士君の様子見て来るわ」
「いいよ……」
「ベットに寝かせているでしょ……今度から止めた方がいいかもね」
「?」
玲のキョトンした顔に母親は思い出す、そう言えば玲は第二次性徴を迎えても兄とは違い自慰をあんまりしてない……時折夢精が有った事はわかっていたが……女の子になった事を分かってないような気がする。
「大丈夫かしら?」
「はい……受け身取り損ないました」
「リーナちゃんが玲の事が好きだった……女の子になって一番ショックを受けていたからね」
「知っていたんですか?」
「玲が発症してズッと泣いていた……私もあんな姿見るの初めてだったから」
部屋に入るなり洗面器を置いた母親は寝ている高士を見る。
「暫くは落ち着かないと思うけど頑張りなさい」
「はい?」
「恋愛に……」
高士は真っ赤な顔になる。



・祖父慌てる

玲はため息交じりで晩御飯の準備をする……母親の実家が戦前から続く料亭をしていた事もあり料理の腕前はそこら辺の主婦よりも遥か上だ。その為か兄も自分も気がつけば料理が出来る用になっていた。
「母さん、ドライカレーの具全部使うよ。綾音従姉が呑む気だし」
「明日つくっておきなさいよ」
楠瀬家は家業柄カレーもドライカレーが定番になっている……要は車内でも食べられるお弁当に出来る食事なのである。ただ母方の実家も定番メニューになっているので普通のカレーは外食の方が多い。
「ワンタンの皮使いきってもいいわよ……煩いのが来るし」
「日菜子ぉおおお!」
玄関から聞こえた声に母親はため息をつき、玄関へと足を運ぶ。
「祖父さん……」
少々痩せているが腰も足もピンピンしている老人は玲を見て言う。
「おおっ、玲かぁ……ここまで発酵するとはなぁ」
「もう、お父さんたら何言い出すのよ……店の方は大丈夫なの」
「息子二人に任せておるわいっ……ん?楠瀬の従姉妹らも来ておるのか?」
「ええ……」
居間に通すと三人とも会釈する。何度か盆と正月の際に有っているしお年玉も貰った事もある。リーナも顔馴染みなので会釈する。
「玲が変性症になったと聞いてなぁ……雛人形を買ってしまったわい」
若いお弟子さんの一人がダンボールを運びいれたので日菜子は慌ててスポーツドリンクを刺しだす。
「……おとーさん」
「三段飾りなら大丈夫やろ……」
孫娘バカになってしまっている父親に日菜子はため息をつく……息子しかいなかった家庭の場合、変性症が出るとどうしても雛人形を買ってしまう祖父母が多い。
「で、掻き入れ時に来たのは?」
「そりゃあ孫娘が増えたのだからなぁ……うん」
神田川 仁三郎は如何にも気難しい外見を持つが実は子煩悩であり息子二人にも早々と家庭を持たせた。長男一家は息子二人に娘一人、次男一家は娘二人に息子一人……仁三郎は孫娘が産まれると雛人形一式をプレゼントをしている。
「馴染みの人形師のお弟子さんらの作品だが気にいってのぉ……」
「はあ……母の苦悩が分かる気がするわ」
「なにぃ、この先も色々と仕事が詰まっているからのぉ……今日位はゆっくりしたいもんじゃ」
戦前から続く料亭と言う事もありお弟子さんも幾多も輩出、そのお弟子しさんを介し出張料理の依頼が来る事も珍しくなく、料亭の常連も各界で名を馳せている者ばかりである。
「大親方、お迎えの際には連絡をお願いします」
「すまんな……」
お弟子さんの一人が会釈した。
「若いわね……」
「今年で三年目じゃ……自動車の運転が上手くってな……」
「……和食界の重鎮に包丁握れなくなるような事故だけは避けたい訳ね……」
リーネも納得した表情で言う。
「さて湿っぽい話は置いといて呑むか」
綾音従姉が待ってましたと言わんばかりに用意していたグラスに氷を入れ、仁三郎は持参したウィスキーを注ぐ。
「あ~~もうぉ……玲、とりあえず揚げちゃって!」
茅野従姉が中華鍋に油を入れガスコンロに火を付けた。
「神田川の従姉妹らって酒に弱いって?」
「うん、リキュールでもダメだって……何度かウチに泊まった事もある」
玲は苦笑しつつもワンタンの皮にドライカレーを詰めて包み茅野従姉はそれを揚げる。
「二人ともどんどん揚げてね……」
この分だと酔い潰れる事は目に見えた……双方ともストレスフルゲージな職種だからだ。



「こんな夜分に恐れ入ります……」
「義姉(=兄の妻)らには連絡してます……」
数時間後にすっかり上機嫌になった祖父をお迎えに来たお弟子さんが運転する乗用車に載せたのは玲の父親である。帰宅した時には既に出来上がっていたのでそのまま酒の席に流れ込んだが酒豪なので平然としている。
「あっ……これ夜食にどうぞ」
タッパーに入れた握り飯を渡すとお弟子さんが恐縮する。
「碌に食べてないでしょ……がんばりなさい」
「ありがとうございます」
「容器は急いで返さなくってもいいわよ……お盆の時には実家に顔見せるから」
「はい、大女将さんに伝えておきます」
頭を下げ彼は運転席に座り乗用車を走らせる。
「玲、茅野と宇佐美ちゃんと一緒に風呂に入りなさい」
「うん……って!!」
「貴方はもう女の子よ」
「あっ……」
既にリーネは両親が帰宅しており十分前に帰宅しているし高士は晩御飯が出来る前に帰宅……真っ赤になっていたが玲は気にしてない。脱衣所に入り衣類を脱いでいく。やはり玲の胸を生で見るとその迫力に圧倒される。
「凄いなぁ」
「宇佐美もこれ位になりたい」
「宇佐美、肩がこるぞ……」
茅野従姉はポンと妹の肩を叩いた。
kousuke
2017年03月03日(金) 01時39分56秒 公開
■この作品の著作権はkousukeさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ


この作品の感想をお寄せください。
感想記事の投稿は現在ありません。
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除