第二次性徴変性症7
・女の子一年生 その2

玲は軽く泳いでプールサイドに上がる。違和感がある……少年の頃には感じなかった抵抗感で戸惑っていた。
「やはり引き締めないとなぁ」
これじゃ空手の型をするにも影響が出る……玲は望まない爆乳になった事にため息すら出始めていた。
「これじゃあ知られるのも時間の問題だよね」
「美濃島さん……」
「今でもいるしねぇ、盗撮犯。先輩から聞いたけど昨年なんて本体並にする望遠レンズ持った人もいて……日比谷道場の門下生がフルボッコしたって」
「凄かったって……先生が止めた時点じゃ顔が血まみれで……」
別の同級生が言う言葉に玲には大方検討がついた……確か今年から高校に通っている先輩である。
「それよりも平気なの?」
昨日のティザーガンの傷には大きなバンソウコが張られている。
「うん、それよりも」
「香苗の事なら心配いらないって……伯父さんらは感謝しているって」
これから気を付けないといけなくなる……競泳水着に包まれた胸を見て玲は気が重くなる。
「楠瀬、計測するぞ」
「はい」
スイムキャップを被りゴーグルを装着すると飛び込み台へと上がる。既に水泳部員並のスキルを持っている玲は単にタイムの更新をすればいい。そして笛の音と共に水面へと飛び込む……感覚的に違和感を感じるが玲は泳ぎ始めた。




・女の子の扱い方


数時間後、楠瀬達は水泳の授業が終わり更衣室に居た。中央に置かれているベンチにて座りこむ楠瀬は肩を落としている。シャワーも凭れかかる様に立っていた状態で髪の毛を洗う気力すら無かった。
「退院してあれだけ泳ぎ込めば疲れるの当たり前よ」
葵川先生が様子を見に来て言う。
「男の子のままの感覚で泳いだの……こんな胸で」
楠瀬は上半身にブラウスまで着用しているが下半身はショーツのみで同級生らの言葉も聞こえない。少年時代もここまでバテた事はなく、喋る気力も無い。
「リーヤ……お腹すいた」
すると彼女は玲にゼリー飲料を渡すと一気に袋がしぼむ。あれは激がつくほどに不味い事で知られているし誰もが一度は飲み口を外すが……それすら飲み干すとなると危ない状態である。
「今日は学食も開いてないし……」
リーヤも玲の主治医から体質の変化が起こる事は聞いてはいたが予想外だ。
「はいはいどいて、どいて」
保健室から養護教諭が来る。誰か呼びに行ったのだろう。
「楠瀬さんも女の子なったばかりなんだから……泳いでいる最中に尽きたら大事よ」
「すみませんっ……んっ」
彼女は手慣れた様子で脈拍や体温を測る。
「楊さん、お昼なら直ぐそこにある食堂が開いているけど」
女子生徒の一人が言うとリーネは直ぐに玲にスカートを着せて上履きを足に履かせる。
「問題はないけどお昼済ませたら直ぐに帰宅して……」
養護教諭が言うとリーヤは頷く。校則では買い食いは原則禁止だが長期休暇の際の買い食いは黙認している節もある。


「お腹一杯……」
リーヤも玲がここまで食欲があるとは思いもしなかった。明らかに男子の時よりも食べている事は玲も自覚していた。
「玲ちゃんが女の子になって小食になるかなぁと思っていたけど……」
ここも兄の同級生だった人が看板娘を務めており顔見知りで当然の事ながら玲が女の子になった事は知っていたらしく驚かなかった。
「初めに死にそうな顔を見た時には驚いたわよ……」
カツカレーライス大盛りを完食したのである。因みにサイズとしては平均的な男子学生なら根を上げるボリュームといっておこう。
「そこのお穣さんは変性症発症者かな?体内に蓄えてある栄養分も減っているからね。自然と食欲が出て来るんだよ」
隣の席に座っていた初老の男性が告げる。さっぱりとした顔付で人当たりが良い感じをしている。
「暫くは異常な食欲になるが間食も運動を適度すれば太らないからな……ちゃんと主治医には報告しておいた方がいいよ」
「はい?」
玲が不思議な顔になると男性は言う。
「ああ、私は医者でね……変性症の子は何人か診ているから」
「そうだったんですか、ありがとうございます」
彼は会計を済ませると店から出る。
「知り合い?」
「う~~ん時々みかけるわねぇ……」
看板娘の彼女も名前すら知らない。すると厨房から声がする。
「ああ早坂先生だよ……隣町にある実家の医院勤めだけど中学と高校はこっちだったからな」
「おとーさん知っているの?」
「両親はこっちに家を持っていたからね……今はマンションになったけど」
玲とリーヤは其々会計を済ませる。
「また来てね」
「はい」
二人も店を後にして自宅へと向かう。途中でリーヤが自販機でスポーツドリンクを買うなり投げ渡し公園にある東屋の下で休んだ。
「ねえ、女の子ってどんな事すればいいのかなぁ?」
「そりゃあ……答えなんて無いわよ」
リーナの言葉に玲は項垂れる。
「でも……玲はどうするかは分かっていると思うよ」
「ありがとうございます」
「それよりも親類の反応は?」
「それがねぇ……従姉妹らが今日来る事になった」
「確か三姉妹だったのね?」
「うん、長女の綾音従姉さんに二女の茅野従姉さんに三女の宇佐美ちゃん……」
綾音さんは兄のニ歳年上の綺麗な人であるが10t車を乗り回す姫トラ、茅野さんは高校生で活発な人でショートヘアが印象的。そして三女の宇佐美ちゃんは小学四年生で末っ子系パパ大好き子だ。とにかくこの三姉妹が揃うのは中々難しいのだが……。



「ただいま~~」
自宅に帰ると母親の靴ではない女性モノの靴が揃えて置いてある。リーナは隣の屋敷に住んでいるので制服から私服に着替える為に帰宅した。
「あら、お帰り……来ているわよ」
「玲君……まあ凄いわねぇ」
居間のドアから出て来た綺麗な大人の女性が綾音さん、綾音さんの胸も凄いサイズで血を見た下衆な男達も多い。
「ゲッ!……負けた」
玲の胸を見た茅野さんはガクッと顔を下げた……引き締まった胸故に中学生成り立ての玲の胸を見てショックを受けたそうだ。
「玲従姉さんって呼んでいいですか?」
背後から宇佐美ちゃんがテレながら尋ねる。大人しい子で直ぐに従姉か伯父伯母の背後に隠れる子だが……。
「珍しいね……綾音従姉さんが休みなんて」
「従妹の一大事よ……ごめんなさいね、お見舞いにも行けずに」
多分叔母は詳細は伏せておいたのだろう。
「学校裏ネットを見てまさかって思っていたけど……」
スマホを操作した茅野従妹さんはため息をついて見せる。数時間前の水泳の授業の様子が映し出されている。
「これもう拡散しているよね」
「うん……」
茅野従妹の申し訳ない表情になる。
kyouske
2017年02月24日(金) 17時16分08秒 公開
■この作品の著作権はkyouskeさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ


この作品の感想をお寄せください。
感想記事の投稿は現在ありません。
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除