第二次性徴変性症 1
・下された診断

「……」
医者の言葉に僕は絶句した。学校の健診で再診指定になりそれが地区の病院ではなく県立医大付属病院になっていたので聊か不気味に感じていた。
「……まぁ、今まで持病も無し、アレルギー発症無しでしたのでいきなりここで再診してくださいって言うのも驚いたでしょう。尿検査のサンプルでDNA診断で見つかって……より精度が高い血液検査やMRIやら、まだ初期症状ですが急激に症例が進むと心臓が止まる事もあります……」
医者は淡々と話すが事の重大さは分かる。
「第二次性徴変性症……通称“性転換症候群”かよ」
僕は目の前が真っ暗になる。精通も小学三年生で経験し夢性もする事もある……絶対にならないと思っていたが……これも性転換症候群が発覚した男児の傾向らしい。
「お父さん、どうしましょう?」
「仕方ないさ……戸籍の変更とかは?」
「はい、ソーシャルワーカーと弁護士が進めますので……」
診察室にて付添に来た両親は医者の傍に居たソーシャルワーカーに案内されて部屋を後にする。
「楠瀬 玲君……女性になっても無理に男性に戻れる事も可能だが自然生殖は出来ない」
「……」
中学一年生の初夏、その日から僕は入院した。




・謎多き病気

性転換症候群が何時頃から目立ち始めたのか不明、ただ分かっているのは割合こそ差があるが男児が発症する事……生物兵器の暴発やら漏洩、宇宙人の破壊工作やら……みんな確証が無いので噂の域だ。
「……」
到って健康に見えるが急激に発症すると心臓の動きが極端に活動が低下する、要は仮死状態になるが通常の緊急救命処置で無理やり心臓を正常に戻そうとすると却って心停止してしまうからだ。尿検査のDNA検査でその兆候が付きとめられた事は寧ろ幸運だと言うのが主治医の本音だろう。病気が病気だけに個室に放り込まれた。
「玲っ!!!」
幼稚園からの腐れ縁の日比谷 高士が来た。
「タカ、病院」
「お前何処がわるいんだよっ!」
「第二次性徴変性症」
「???」
彼はキョトンした。
「通称“性転換症候群”……性の授業でならったでしょ」
切り花を乱雑に彼の頭に置いた少女は呆れる。幼さを残すも異国情緒に相まって美しくブレザー姿の少女から発する声が日本語なのがある意味ギャップを感じさせる。
「リーヤ……君まで」
「担任が様子見て来いって……既に担任も知っているから、タ~カぁ、ばらしたら……」
リーヤの事、楊 リーヤは日本に帰化した中国人の父と欧州の小国出身の母親のハーフで日本産まれの日本育ちだ。幼馴染であり日比谷の祖父が空手の師範代と言う事もあって僕も彼も彼女も空手をしている。特にリーヤの腕前はよく小学四年生の時に一帯を恐怖に陥れた変質者を一撃で仕留め、昨年じゃ半グレかチーマーの不良らに絡まれるも数人K.Oした。これには続きがあって面子をつぶされ怒りのまま報復に来た彼らを待っていたのは高士の祖父に父親、そして少林寺拳法も嗜んでいるとも言っている彼女の父に屈強のお弟子さん達……何れも警察官や軍士官で一晩で壊滅したのは有名な話だ。噂じゃ一帯の不良らは彼女だけは絡むなと言う暗黙の了解が広がりつつある。
「ワカッテマス」
「よろしい……玲も女の子になったら私がちゃんと教えるからね」
「ハイ」
「それと担任から課題預かって来たから」
抜け目無いなぁ……まあ暇つぶしになるのなら良いか。
「まとめて出さないでね……担任も復帰の最中だから」
「ああ、明日も来るだろ?」
「一応ね……」
眼光鋭くなって高士は部屋を出る。
「関係変わるのかなぁ……」
僕はため息をつく。



・対処療法の前に……

「精液を?」
「まあ研究のためでもあってね……知っての通りこの症例は毎年何処の県でも数人は出ているんだよ……非常にデリカシーな事を頼んで済まないと思っているが」
数日後、主治医が切り出した言葉は精液をサンプルに貰いたいと言う事であって、言葉を選んでいる辺り気を使っているのだろう。
「分かりました……」
「じゃあはいって貰って」
看護士がドアを開けると唖然とした。そこには看護士衣装に身を包んだリーヤが居たからだ……しかも胸元が強調されているので思春期男子なら前屈み間違い無しのサイズだ。
「彼女は第二次性徴性異常発育症でね……異性の匂いに過敏に反応してしまうのだよ」
「!!!!」
「安心して、既に私は経験済みだから……」
良く見ると彼女の顔は妖しくも微笑んでいるしタイトなミニスカートが床に落ちた時にはある筈の下着が穿いてなくガーターベルトしかない。
「では、頼むよ」
主治医はそそくさと出て行く。
「あっ、あの?」
「最初は採取だからね」
高士ごめん、僕先に童貞卒業しちゃうわ。

kyosuke
2016年12月29日(木) 14時47分18秒 公開
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