性別変更 8
・蘇る記憶

時折、唯は同じ夢を見る。一人の少女が自身の背丈よりも長い銃を持って戦場を駆け巡り、時には甲冑に身を包んだ騎士達の先頭に立って指揮をする。だがその顔は野心に満ちた恐ろしい顔をしてない……一人になると物悲しげな表情を見せ、戦場にて命を絶たれた者達への祈りを捧げていた。唯は最初RPGのやり過ぎかと思ってはいたが少女やその服装、銃まで当てはまる物はなかった。ただ銃に関してはアンチマテリアルライフル(=対物ライフル、昔は“対戦車ライフル”)に非常に似ているが“魔法”か“魔力”を発動する事も出来る。そして分かった事は唯が知る限りこの様な史実もRPG作品もない。

 -岬 唯……聞こえますかー

唯はハッとする、初めて彼女が“自分”に話しかけた。

 -私の名はエルト.フィデェーネ、魔幻界のセフィールス王国最後の王女ですー

フィデェーネはボロボロになった衣装や至る所から出血や傷を気にする事もなく語る。

「何故僕の事を」
「貴方の母親に私のクリスタルを託し、そして魔幻界を離れました……魔法よりも科学を選び、魔法が無い世界に安住の地を選びました」
母が……。
「本来ならゆっくりと話したいのですが……時間がありません」
「?」
「貴方の大切な人が危険です。このままでは人でなくなる可能性もあります。私はクリスタルを託した時点で肉体が消滅しました……ですが貴方なら出来る筈です。その代わりに男性で無くなります」
「わかった。君もやり残した事があるんだ」
唯はフィデェーネを抱きしめる……彼女は涙目になって言う。


 パステルガンナー 唯.フィデェーネ リローデット


唯は自分の身体が変わっていく。



唯が眼を開けた時に目の前に夢で幾度も見た銃が宙を浮き、何処からともなく飛んできた魂のクリスタルを手に取ると詠唱を終えた。
「聖銃“グランドクラス”、セーフティロック解除」
手に取るなり唯に魔力が含んだ繊維で編まれた衣類が出現しセーラー服にも似ているが胸や膝には金属にも似た物質がガードする。
「大銃術士 パステルガンナー。ここに復活」
「パステル!」
「ミットナイトパープル……ありがとうございます」
「ちっ、かっかっかかれぇえええ!」
狼男型慾魔の指示で全身タイツの様な衣類に纏った戦闘員らが襲いかかるが、パステルの一振りであっという間に戦闘員が木の葉のように舞う。グランドクロスの先端から光の剣が出来ている。
「パステルガンナー……大丈夫なの?」
詠唱を終えたミットナイトパープルは心配そうな顔をする。
「一通りの使い方なら知ってます、先に明さんと雄二の問題を片付けます」
腰にあるホルダーには幾つか弾倉がベルトで固定しており魔力が一番高い深紅の弾倉に換装する。戸惑う事も無く唯は慣れたように作業をする。
「分かったわ、あの狼男型慾魔は喰い止める」
ミットナイトパープルは愛銃であるストライクガンナーを構えるなりレイティアをパステルガンナーに放り投げる。アシストに使う為だ。
「貴方は……」
肩に乗っかったオコジョを見て、パステルは万が一の為にバラで持っている魔力カートリッチ弾を口付けし短く詠唱するとレイティアにかかっていた呪いが解け、欧州人に似た美少女銃術士に戻った。
「え?」
まさかの事態にレイティアも唖然とする。
「貴方の呪いは全て私が起因しているから……レイティア」
パステルの言葉にレイティアは頷く。今は目の前に呪いが掛っている二人を助けることが先決だ。
「偽りを押し通す事を禁じ、真実を取り戻せ!」
パステルは叫ぶと同時に強化カートリッチを全て撃ち弾はアキラと雄二其々の周辺で停止、かかっている魔力を喰らいつくした。
「なっ!」
「アウルス、貴方は侵略者のクローニング技術に手を出してまで私を復活させようと言う忠義心は分かります。ですがあれ以上王制を維持すれば魔幻界は滅んでました」
「姫様……」
ミットナイトパープルは直ぐにパステルの後ろに移動しレイティアも魔銃を構える。
「貴方の魂を解放します」
深く青色に塗装された弾倉を装填しパステルはトリガーを引いた。狼型慾魔の事アウルスは何も抵抗せずに被弾してそのまま消滅した。
「終わったようですね……」
「他の連中も闘う気ないし」
「あらあら、おくれてしまったようですね」
「おねーさま、遅い!」
ミットナイトパープルは頬を含まらせているが三人は平然とした。




・後始末は国際問題

ジャスパルオンC4が介入した事もあって戦闘はこれだけで終わった……が、後始末は大変な事態になり人間界と魔幻界双方の当事国で話し合った結果は唯の魔法使用は本来禁止事項になるが突発的覚醒と危機的状況打開の為にやむを得ない事として罪に問う事はしなかったが代わりに唯は魔幻界にて魔法を学びライセンス取得と言う運びになり大騒ぎになる。
「はぁ~~もう少しおだやかにさせたかったわ」
自宅にて母親は唯が何れは性転換する事は察していたがこんな大騒ぎになるとは想定を超えていた。
「……ほれ、戸籍変更手続きの書類!」
兄も連日の関係機関の合同査問会で会社の有給が全部潰れそうな勢いになる予感の最中にその帰りに市役所にて関係書類を取りに行かされた。
「う~~難しい」
唯は薄高く積まれた本の谷間に埋もれそうになる……魔幻界の各国際言語書物だ。
「一番難解な言語が覚えられるのに……」
レイティアは呆れた表情で唯を見る。彼女の祖国セフィールスは高度に発展した侵略戦争後に帝制が共和国制に移行したが言語の難しさは変わってない……その割には夢幻世界の他国の言語が理解しずらいと言う怪現象が良く起こるらしい……。
「唯様……とりあえずあちらの学園にみっちり学んでいただきます」
「共学じゃないの?」
「セフィールスは男性は騎士道、女性は銃魔導士が普通で本流は男女別学です」
「……百合と薔薇が増えたから滅んだかもしれんな」
唯はボソッと呟く。
kyouske
2016年03月13日(日) 01時09分33秒 公開
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