性別変更 7
・ムーンサバト

 女は深夜一人で歩いていた……亜麻色の髪の毛は月夜により怪しく光る。ニ之坂 紫苑はため息をつく。そして肩にはオコジョに似た動物が威嚇をしているのか尻尾の毛を逆立ちさせている。オーグの様な怪人が出現したのだ。
「……いくよ、ストライクガンナー」
『OKっマイマスター』
アサルトライフルのキーホルダーが付いたスマホを翳す。
「マジカルガンナーリローデット!」
地面から魔法陣が出現し私服のショートパンツ&シャツが消え、直ぐにセーラー服に似た衣類が出現し、一部は甲冑も出て来る。足にはブーツ、手にはマジカルガンナーを支える道具、何よりも眼の前にキーホルダーであったミットナイトパープルのアサルトライフルが出現した。
「マジカルガンナーミットナイトパープル!」
「オカシテヤゥゥウウウつ!」
オークは最低限の衣類を脱いで飛びかかるも紫苑はストライクガンナーに銃剣を付け回避する。
「アクセルライアット!」
空に回避した紫苑はそのまますストライクガンナーの限界高度に達していた。こうでもしないと威力が相殺出来ない……というよりは眼の前に居る獲物がオークにとって上物なので魔力が溢れてしまい巨大化しているのだ。連射し魔法の光が散弾の様に拡散する。
「ぐぁああっ!」
「チャージっ!」
ストライクガンナーに魔力が込められていく……そして銃剣に光が灯り始める。
「眠れぇえええ!永遠たる闇の中でぇ!」
急降下しオークの弱点である額にある水晶に銃剣を突き刺した。
「グァアアア!」
断末魔が響くもミットナイトパープルの手により結界が展開されていてその声は聞こえてない。そして素体になる人間が出現する……。
「今月に入って急に増えたわね、慾魔」
慾魔、それは時折出現する魔の存在……欲望を抑えきれず魔人化するのだ。だがそれを退治する存在もいた。魔法少女達だ。マジカルガンナーもその一つだが彼女達の武器は銃術と呼ばれる比較的新しい流派の魔法少女である。
「他の魔法少女らもそう言っているし……」
マジカルガンナーは後継者が覚醒が進んでなくミットナイトパープルしか闘えないのだ。これには他の魔法少女のように女の子の夢で覚醒するのではない。銃と言うのは男の子のイメージが強いからだ。だが魔法少女としては活躍できる期間が短いのが多いがマジカルガンナーは他の魔法少女よりも長い間闘える。ではどうして後継者を要するのか?それは中学生や高校生だからだ……ミットナイトパープルは最年少とは言え中学二年生、他の面々は高校生になったばかりだ。
「でも慾魔との闘いは魔法少女の心を侵食する……それが短命に終わる理由」
マジカルガンナーは何故かこの様なリスクが無い……故に他の魔法少女らは慾魔はマジカルガンナーに一任しているのだ。
「よりによって……合宿先でこんなにわんさか出ると色々と大変なのよ」
「そこをなんとか」
オコジョに似た小動物が立ちあがって頭を下げる。
「ぁ……私も好きで少女になった訳でもないのに」
マジカルガンナー適正者の中にはミットナイトパープルの様に元男児だったケースが多く、全員転性者と言う事例もある。他の魔法少女ではまずは無い。
「だから、記憶改竄事象の大魔導したら僕はこんな姿に……ううっ」
少女の眼は据わる……それは普段見せない表情だ。
「早い所、後継者見つけないとねぇ」
二之坂 紫苑は背伸びして思う。既に変身を解除すると同時に現場から離れている。
「後はエクステンダーに……」
自己処理はあちらに任せてもよいだろう。


・銃術士

マジカルガンナーは魔法少女らの分類上は銃術士と呼ばれている。魔法少女達は何れも別次元の太陽系第三惑星地球に実在する各国からの使者により力を与えられており、マジカルガンナーも例外ではない、銃術士とは銃を用いて戦うレアなカテゴリーで魔力を込めた弾丸を使う事で狙撃や遠距離攻撃に長けているので慾魔から出る呪いの影響を受けにくい。その反面なり手が少ないが……今はオコジョ似の小動物になってしまったレイティアはため息をついた。話し方は少年に思えるが紫苑同様“少女”である
「で、どうしてここに?」
「そりゃあパートナーだから」
レイティアはふんぞり返るが紫苑はため息をつく。幸い合宿先の民宿がペットOKで“紫苑の鞄の中に潜り込んでいた“となっている、無論紫苑は彼女を自宅に置いてきた。夕食も終わり課題をしていた所にレイティアに呼び出されて一戦を交えこっそり戻って来た。
「最近になって怪人が出没しているよね……」
「その怪人の中に慾魔崩れが居たの?」
「そう……何れもある噂を聞きつけている」
レイティアの言葉に紫苑は息を飲んだ。

     大銃術師クィーンレインボーが復活する

「ま、まさかねぇ……だって彼女は自らの意思で消えた。魂も……」
「そう……私の曽祖父が若い頃にね」
魔法少女らが使う魔法の種類は紫苑らが住む世界とは別次元にある魔幻界と呼称される世界の魔法である。銃術もまたその一つだ……大銃術師クィーンレインボーとは銃術士を束ねる称号だ。しかし魔幻大戦という戦乱に心を痛めた彼女は自らの意思で消えたと言われている。それを知っている者はもう居ない。レイティアの曽祖父も彼女が産まれた時には死んでおり文献で知っている程度だ。魔幻大戦は彼女の死で幕を閉じたのも事実だ。歴代マジカルガンナーの活躍もむなしく痕跡すら見つからないのだ。慾魔は魔幻大戦の際に魔力過多により魔人化してしまった人間の事で本体が消滅しても次元を股にかけて漂っていると言う。この世界も例外では無い……ただ不完全な場合が多くダルティアン帝国が不完全な場所を科学で補う事がある。
「ジャスパルオンC4が倒した怪人にも慾魔崩れが居た訳ね」
「そう……こっちとしてはだんまりを決めないとね」
戦乱は確かに終わった事は事実だがそれはダルティアン帝国の侵攻と言う新たな戦乱に過ぎなかった。これまでとは異なる敵に数々の魔法少女は敗れていく中クィーンレインボーはその身を引き換えに侵略部隊の総大将であるダルティアン帝国の皇子数人を葬った。ダルティアン帝国は総崩れになり魔幻界の侵略は諦めた……が、慾魔崩れらはこの異次元の侵略組織に寝返ってしまったのである。そして魔幻界自体も先の侵略の為か人材が枯渇、魔法も衰退したと言う事もあって、魔幻界に点在する各国家は魔法が無い世界に人材を求めた。
「で、先輩方は?」
「あの人達はギリギリにならないと来ないよ」
紫苑の他は高校生でしかも進学校……今の慾魔崩れには突出した猛者が居ないので比較的勉強が出来る紫苑に任せッきりにしている。
「聖銃“グランドクラス”が発動すれば来るよね?」
レイティアは腕を組む。それは魔幻世界にある国家セフィールスに厳重に管理されている彼女の武器だ。



・深淵の闇

唯は寝ていた。昼食に盛られた睡眠薬と禁断の雫により静かに身体が変化を始める。周囲に魔法陣が幾重にも出現し身体が輝き始めた。
「ふふ、目覚めるわ……最後の王の娘が」
病室では無く地下深くに広大な空間には荘厳たる柱が幾重にも並び天井が見えない、まるで神聖な場所とも誰もが想像が付く。
「一族の悲願……アキラよ、礼を言う」
「……彼女は元に戻るが過去の記憶を失う副作用があるがそれでいい」
アキラは悲しげな表情をするが恋人である明本人の為だ。
「そしてお主も人でなくなる」
アキラは悶え始めると背中に蝙蝠の様な巨大な翼に黒く先端がとんがりしなやかな尻尾が出現する。
「安心しろ、お主は女王の側近の一人としてとりたたてやろう……」
「一人?」
「唯に恋心を抱いた幼馴染を捕えたからな」
アキラは狼男型怪人の視線の先に居る全裸の少年に見覚えがあった。
「慾魔としては中々の手頃だ」
狼男型怪人、いや慾魔はニヤっとする。今こそこの世界を第二の魔幻界とする時が来たのだ。少年は女王に性的興奮している。最も慾魔に適した人材は恋心を抱きやすい思春期の年齢とも言われており恋愛と性欲が混同している。
「数年前のお前と同じ状況だ……」
アキラは薬物で壊れてしまった明を救う為に彼女の身代わりになった……それは魔力によるモノだ。

空間を揺るがし鈍い音がした。

「思ったより遅かったですね、ミットナイトパープル」
「ご丁寧に劣化慾魔をわんさか出されたら手間取るわよ」
少々バリアジャケットに損傷があるが彼女は銃口を向ける。
「貴方の正体は割れているのですよ……二之坂 紫苑、唯が転生者と言う事を何時知ったのですか?」
「最近ね……」
「だが、遅かったですね……クィーンレインボーではなく、シャドーレインボーとして生まれ変わる瞬間を目撃する事になります」
狼男型慾魔は高笑いし始めるも紫苑はクスっと笑う。それは既にこうなる事を知っていたからだ。
「それはないわ……クィーンレインボーは既に闇へと染まっていた。誕生の際に握られる彼の魂のクリスタルを確認した?元家臣さん♪」
「!!!」
狼男型慾魔は動揺する……強大な魔力を持つ者はこの世に生を受けた際に手には魂のクリスタルが握られてくる。それが見当たらない。
「改造されて記憶まで欠落したのかしらね……さあ、今こそ復活の時です」
紫苑は詠唱するなりレイティアは防御魔法を展開する。


   グランドクロス!スタンバイ!


その声は銃声の様に響き狼男型慾魔を絶句させた。寝ていた筈の唯は眼を開けて銃を掴み、知らない筈の魔幻界の言葉で歌い始めた。
kyouske
2016年01月04日(月) 23時01分35秒 公開
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少しずつ書いていきます。

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