性別変更 6
・縺れる運命


 数日後の昼下がりの公園……とは言っても半ば人工的に森を作り散歩道を構成された都会のオアシスである。その一角にあるベンチにて海は座る、ベンチの下にてお目当てのモノが置かれている事を足で確認する。
「(凝っているねぇ)」
何処かのスパイ映画の主役になった気分になるが引き締める。紙袋にはバーコードだらけの書類数枚とディスクが二枚だ。
「(この分だとエクステンションポリスも慌てていると言う事か)」
今抱えている担当企業は優秀な人材や機材揃いなのか専門家のお呼びがかからないと言う少し悲しいが仕方ない。背伸びして海は歩き出した……少しばかりお得様と他愛も無い世間話でもしていくか……。
「ん?」
あの傷だらけの携帯からの着信が来た。
「-マイマスター、怪人出現っ!現在エルガショッピングモールにて暴れてますっ-』
近くにあるショッピングモールの事だ……携帯を操作すると愛車とパトウィングが合体して特務捜査支援車輛に変化する。
「一体なんなんだよっ!」
海がジャルパルオンC4にて怪人と闘うのは年に数回程度、ただスパンが短いのは初めてだ。
「本職は!」
「-別件で対応中!-』
「パラレル、会社にビジネスメール送信っ!」
会社用のスマホが勝手に動きビジネスメールを送信する。これは準機密プログラムにより登録されたアドレスしか開く事が出来ないし無理に傍受すれば文字化け記号だらけになる品物で海が勤務する会社の自信作だ。
「イグニッション!」
車内にて変身するのはやはり機密保持の為だ……特に海は出来るだけ車内での変身をするようにしている。




「言っておこう、俺は非常に不機嫌だ……」
目の前に居るカマキリのDNAを組み込まれた怪人に言うなりジャスパルオンC4はそう告げる。戦闘になり形勢不利で子供を人質に取ろうとしたがマルチドローン“タクコマ”が救助……支援車輛となるトランポーターにより運ばれてきた。
「けっ、イルボンのく、クセィィニィイ」
ジャスパルオンC4はレーザーブレートを展開したまま肩を叩く……バトルスーツには耐レーザー加工に加えてシールドが展開するので感触的に警棒を肩に載せているのと同じである。
「どうなっても祖国に泣きつくなよ、既にお前は“戸籍上死亡扱い”だ。そして次元連邦の法律により地球外労務刑になる」
ジャスパルオンC4はレーザーブレートを構えた瞬間、踵にあるブースターが作動した。
「閃光っショックブレート!」
電光石火と言う表現が適切な程カマキリ怪人は両手を切断、余りの激痛に叫ぶが助ける者はいない……タクコマから捕獲用ネットが射出され電撃が流された。
「もう片付けたのですか?」
「これ以上したらここの運営に差し支えるぞ」
本職のジャスパルオンスタンダートは苦笑する、ジャスパルオンC4とカマキリ怪人の戦闘で出来た損傷はテナント数店が数日間の休業になる事は確実だろう。



「……」
海はまたまた某県警の一室にて報告書を仕上げた。
「この前の怪人のDNAロンダリング終了した結果、身元が分かりました」
報告書にはトカゲ男の材料になった男の顔写真が添付、更に身分証の写真もある。身分証は日本国が発行したものでは無く旧韓国政府が発行したモノだ。
「半島系か……」
「既に“死亡扱い”なので彼は後日時空連邦刑務所に送られます」
人間用の刑務所では収監する事は不可能と言う事が最大の理由だ……まあ労務刑と言っても家畜の如く扱われ仮に死亡しても文句は言えない。
「残党同士連携する気でしょうか?」
「それはないな、所詮人の姿が変わってもやってる事は同じ事だ」
先の侵略行為により中国は三ヶ国に分裂、朝鮮半島の二カ国は共に崩壊……侵略度合いが最も酷かった地域である。まあ、新韓国政府が保証金目当てに日本国内に居ると思われるジャスパルオンC4の責任追及も外交問題として取り上げたが他の先進国の外圧により消された。
「強請り?」
「そうだろうな……」
海はため息をつく。



・進む企み


唯が検査入院して数日が経つ、検査は数日間のサンプル採取を要する物がある事や急に発症する事もあるので入院と言う形を取った。明は付き添いと言う形を取っておりここ数年取って無かった有給休暇も消化する意味合いもある。
「すみません」
「いいのよ……水着の開発は複数のサンプルが必要だからね、そのお礼の一つよ」
唯の両親は直ぐには駈けつけられないと言うのも理由だし、海も夏休みが取れるかどうか怪しいらしい。
「唯君はどうするの?矯正するの?」
「わかりません……兄や両親は弟のままがいいかもしれないし」
明はその間にもノートPCを持ちこんで書類作成する。
「所で……陸上の長距離してみてどう?」
「楽しいですね……」
「もしよかったらトライアスロンに挑戦してみない?ウチ(=ミサワスポーツ)が育成枠設ける話があるの」
確かに三沢財閥には自動車部門の他にもバイクと自転車部門もある。日本には馴染みが薄いが欧州には国際大会もある……。
「僕よりも他の人に話を振ったほうが」
「そうよね……中々、転向者がいなくってね。競技団体も若手育成したいけど」
その時どっちの性別になっているのか分からないのに……唯は苦笑するしかなかった。


「対象者に変化なしです」
「急性で起こる可能性はあるから用意したのに」
「そんなもんです……そもそも今回の対象は特別ですから」
「???」
「もしかすると帝国復活の目途も経つかもしれませんが、危険性もあるんです」
「危険性?」
「岬 唯は両親や兄の正体を知らされて無い……」
「????」
翁は何の事だがさっぱり見当がつかない。
「翁、私はダルティアン帝国に滅ぼされた別次元にあった星の出身でしてね……そこは科学よりも魔術が進んだ世界なんですよ」
狼を模した怪人がにっこりする。
「ダルティアン帝国は科学を過信し、我が祖国は魔術を過信して滅びた……否、滅びたと言うよりもその文明を終わらせたのですよ……最後の王の娘がね」
猫型怪人も同郷らしい……翁はハッとした。そうだ怪人は“科学”で産み出されたモノばかりとは限らない。猫型怪人は翁に向けて媚びるようにふるまう……彼も逃げようとしたが身体が動かない。
「嗚呼、彼女の魅了は対象を洗脳するんですよ……同じ原種ならかかりにくいですが、貴方の次元では相性良くかかりますから」
狼男型怪人はヤレヤレと思う、それにしてもダルティアン帝国の現地幹部らがまだ生き残っていたとは……厄介な事だ。狼男は憂鬱になるが一族の悲願となるのなら……明も、いやアキラもその事を知って協力して貰っている。明を救うために……。



その日の夜……明は病院内にある機密区画に居た。あの狼男と会っていた。
「仕掛けるのですね」
渡された淡く銀色に光る液体が入った小瓶を渡される。
「君が明の身代わりになる時に使用した“禁断の滴”だ、工藤 アキラ……」
「分かっているよね?」
「ああ約束は守るよ……君の恋人は薬物で脳を破壊されたのではなく呪われているのに過ぎないのだよ……」
アキラは覚悟を決めた。



kyouske
2015年09月07日(月) 02時06分54秒 公開
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