性別変更 4
 唯は控室にて着替える、だが違和感を感じていた。兄の様にボクサータイプの下着がしっくりくる。今まではトランクスであったが……。
「これが新しい水着」
外見は変わってないが股の部分の可動域がスムーズに尚且つフィットするようになっていると言う。
「ありがとうございます、二着もいいのですか?」
「開発部がデータ取りたいからねぇ……他にもモニター増やせればいいけど、難しくってね」
明さんは苦笑した笑顔になる。
「ねぇ、女の子の服装に違和感を感じてなかった?」
「はい」
「一度、専門医に診察してもらった方がいいかもしれないわね。私ね、お医者さんには少し詳しいから……」
これはまぎれもない事実で精神科医に通院せずにいたら鬼籍になっていただろう。それ位当時は苛烈な取材攻勢で大学からも自主退学を勧められたと言う噂すらある……そして人知れず引退した。



海の仕事はシステムエンジニアである。先週消火装置の誤作動により盛大な水損でお釈迦になってしまったサーバーの復旧を進めていた。
「だから二酸化炭素にしておけって言うのになぁ」
「仕方ないじゃん、ここのオーナー、世間知らずの半島人だからよぉ……」
同僚はヤレヤレと言う表情になる。
「もう上がれよ、弟さんが待っているんだろ?」
「いや……納期に間に合わないぞ?このままじゃぁ」
「暇ぶっこいている奴らが来るからさぁ……」
海は元々担当だったので応援に来ていたのだが仕様が複雑になり、元通りに戻すには納期がギリギリだ。
「すまんな」
「可愛い弟を任されているんだろ……」
海は同期を白い目で見たが無論彼は冗談で言っているのに過ぎない。


一端事業所に戻り退勤の登録をしていく。やれやれと思いロッカーに向かおうとすると
「海、お客さん」
「?」
ここでは仕事に関係あるのを顧客、無い来訪者をお客と区別する。
「保険屋(外交員)なら断るぞ」
「そうでもないぞ?彼女か?」
同僚の視線の先にはパーテーションで区切られた応接間を向いているので少し身なりを整えてから向かう。
「君は……」
目の前の女性は御堂川 明、無論海とは面識が無いが学生時代の大会には何度か見かけた事がある。
「ちゃんと話すのは初めてだったわね……岬さん」
海は直ぐに言う。彼女の表情から察してここで話せる内容ではない。
「もう上がりますので……別な場所に」
「ありがとうございます」
海は慌てて鞄を取りに行く。
「知り合いなのか?」
係長が尋ねると海は言う。
「学生時代に少々、あっ仁川の所は何とかなるけど後で様子見お願いします」
「海が慌てるなんて珍しい……何者だあの女性は?」
係長はあっけに取られて部下に聞く。




「性同一障害の疑い?唯が?」
「はい……以前にも似たよなお客さんを見て……それで専門医なら知ってますし」
二人は兎に角最寄りの食堂に入りお座席に座っていた。
「分かった、弟の事は何だかんだと見て無かったからな」
「両親は離れて暮らしているって」
「ああ、この事はまだ伏せておいてくれ」
「すみません出過ぎた事を」
「いいさ……」
とりあえずきっかけが出来た……海は思う、あの時よりはしっかりしている。




「彼が通うスイミングクラブの出張販売で次にあるのは?」
「えっと……来週ですね、明が担当しますよ」
「例の水着は?」
「小学生サイズならありますよ、新規で狙っていた所がドタキャンされましたからねぇ」
「よし変更しろ……序に深層催眠装置もな」
「あれは危険過ぎます」
「例の時空捜査官か?我々は人を超えてしまったがそれ故に遺された者を救う事が宿命だ、例え自然の摂理を曲げても抗うのは人の性だ」
夜の帳が下りミサワスポーツの本社付属研究所にて二人は話していた。いやその姿は人ではなく強いて言えば他の動物の遺伝子的特徴を付与された“怪人”である。
「先の侵略により男女の比率が回復しない以上は性同一障害者を望む性別に改造するのも手だ……我々にはその技術がある」
狼男の様な怪人はデータを見つつも言う。
「時空連邦は惑星原種保全と叫んでいるがそれが出来ない以上、正義を振りかざす資格は無い……序に幼児サイズも用意しておけ」
狼男型怪人の言葉に部下でもある猫女形怪人は頭を下げた。
「責任は我らが取る」




唯が産まれる少し前、地球は別次元から来た侵略者により人間文明存続の危機に曝されようとした。それを阻止したのが時空連邦から派遣された戦闘捜査官“ジャスパルオン”、彼の活躍により侵略者は滅んだ、その装着者は地球人であると言う事以外は明かされてない。

しかしジャスパルオンは全ての怪人を倒した訳でもない、その数は把握してないが侵略者により怪人化された地球人も存在している。


「パラレル、どう思う?」
「-カンガエスギ、海は先代以上にシンケイ質ー』
海はとりあえず明を自宅近くまで愛車で送った後インカムを装着しスマホをONにする。
「-デモォ、唯が性同一障害ヲ発症スルには通常の同世代よりも確率高いからねぇ、先代が時空因子を多量被曝している以上ハー』
多目的デスプレイには古典的な天使がにこやかに話す。
「引き続き彼女の監視を頼む、下手するとドンパチになるぞ」
海はサイドボートにある傷だらけのケータイを手に取る。
「-ジャア、トランスポーターもスタンバイ?-』
「ああ、No1~No3まで……緊急展開装備だ」
出来れば最悪の事態は避けたいが……海は通信を終えた。




唯が通うスイミングクラブには幼稚園児を対象にしたクラスもある……習い事の定番になりつつあるのも泳げないと親が恥ずかしい思いをするからだ……。
「今年も盛況だなぁ」
幼児の声がエコーするので友人でもある雄二はげんなりとする。
「仕方ないさ、僕達だってあんな時代があったんだし」
唯らは中学生コースだが自主連と言う形を取っているが本気で日本代表を狙う子もいる。
「でもさぁ……唯はこんな格好でも恥ずかしくないのか?」
「体調悪いとおなか冷やすから」
確かに唯は消化器系が弱く、少しの風邪でも腹を下す。雄二はその事はよく知っていた……。
「雄二も使ってみる?」
「止めておくよ」
ただ雄二は唯の胸が明らかに膨らみが少年の範囲を超えている感を縫いなかった。
「それにしても今時の親って……男児に上半身曝したくないのかぁ?」
先週のミサワスポーツの出張販売以降、唯と同じタイプの水着を着用する幼稚園男児が増えているのだ。雄二はそれも違和感を感じた。
kyouske
2015年07月25日(土) 21時22分23秒 公開
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