性別変更 2
・モニター=モルモット


明はノートPCに外付けされたカメラが作動している事を示す赤いLEDランプが発光している事を確認して衣類を脱ぎ出し、丁度全身が映る様にカメラの撮影モードを切り替える。
『相変わらず奇麗だ』
「私を今の様にしたのは貴方様の仕業ですよ♪……」
『“本人”に逢うかね?』
男のPCにも外付けカメラで手に持っているのか手振れ補正が追いつけないのか画面が乱れるが直ぐに正常に戻る。そこには明と瓜二つの全裸の女性が座っており飼い猫の様に甘えている……明らかに正常ではない状況であるのだが。
『色々と試しているがこの通りだ』
「いいえ、貴方様の事は感謝してます。だから研究の手伝いをしているのですよ」
明は微笑む。その笑みにはとても良い意味ではない事は男も分かっていた。



放課後、学校のグランドにてストレッチをしている唯……その隣には雄二が背中をゆっくりと押していた。彼も今後の事を考えて陸上部に入部しており長距離走を選んだ。
「二人とも水泳部が強い所に進学しなかったか」
面度見は良い先輩が話しかける。
「推薦も厳しいですから……それに俺らよりも凄い奴らが記録会でゴロゴロいたから、スカウトの連中みんなそっちに夢中」
先輩も薄ら笑いをする……陸上の世界も同じ様な光景もあるそうだ。
「岬って女に見えるな」
「散髪に行こうかなって思ったんですが」
染めたり眉を人為的に変えるのは流石に生活指導の先生に方を掴まれるが、髪型に関しては世間的の常識の範囲内であればOKだ。こうでもしないと定員割れを起し、私立に質が良い生徒が流れてしまう……数年前に生徒の自主性を育てると言う建前でこの様な処置に踏み切ったのである。
「まっ、ウチは緩いからね」
先輩はポンと唯の肩を叩く。唯はその時、健全な男の子には絶対に湧かない筈の感情が出た感じた。





数日後、週末……ランチタイムを終えても客足が絶えない店内、所謂シアトル系コーヒーの元祖であり日本に進出、数ヶ月前にこの地方都市にも進出した。
「お待たせ」
明はカジュアルな服装をしているがそれでも大人の色気を出している。
「……」
唯は見惚れるのも無理はない、競泳選手は辞めたが泳ぐ事は好きであり今でも水泳はしているのでプロポーションは素晴らしいのである。
「まった?」
「自分も来たばかりですよ」
「ごめんね、土曜日なのに」
「大丈夫です、サッカー部がグランド使ってますから」
陸上競技は走る競技の方が無難だ……器具を使う場合は安全管理にも問題になるし、教師の指導にも限度がある。走る競技なら練習場所もグランドでなくても良い訳だ……。
「それよりも大丈夫なんですか?」
「大丈夫、私は学生時代からお世話になった今の会社に恩返ししたいから……それに彼氏なんていないからね。ずっと競泳生活していたから……恋愛に関しては奥手になっちゃったかな」
唯はそれが言い訳にも聞こえた気がした。彼女の大学時代の事件はかなり報道された。彼女自身知らない所で進行していたのに世間からのバッシングが酷く五輪代表選抜大会にもエントリーも辞退した程だ……卒業後は引退も考えていたが支援していたミサワスポーツが社会人選手兼社員として迎え入れた。最もこの不祥事の震源はミサワスポーツの当時の取締役の役員数人……彼らは彼女が入社して間も無く諸事情により退任した。
「さて、行こうか……」
明は嬉しそうに唯を見て言う。



「ここがラボ……」
「と言っても実態は社員の保養所って感じね……」
駅前から彼女の自動車で数時間後には郊外にあるリゾートホテルに滑り込んでいた。そもそもミサワスポーツは三沢財閥により出資により設立された会社の一つ、創業当初から児童や子供向けの水着や体育服を手掛けて来た老舗でもある。他にも重工業部門に数社程あり、明の愛車もWRCでブイブイ言わせている海外市場にも人気なスポーツセダンだ。
「ここはバブル期に銀行が無理に開発を進めた、そして崩壊で苦しくなってね、救いはプールの良さ……だからミサワスポーツの一般水着やウエットスーツ/ドライスーツのテスト場所でもある訳」
明は呆れた表情を見せつつも唯を案内する。
「これがパス、無くさないでね」
「はい」
IDチップが内蔵されバーコードが裏面に印刷されたネームプレートを渡す。これはカギでもある訳だ。


「凄い」
屋外50mプールサイドにて唯は新しい水着を着る。
「股の可動個所は新しい素材と編み方で締め付け感を低減しているわ……いや~~全身競泳水着のデータが明っちのしかないから困ったわ」
ノートPCを操作して説明しているのは開発部の石川 恵で明とは中学校時代からの腐れ縁でもある。
「じゃあ、泳いで見て……データ測定するから」
プールには水中カメラはもちろん上にもワイヤーケーブルを使ったカメラまである。何れも三沢財閥が出資した家電会社が開発した試作品だ。その映像は恵のPCだけに記録されている訳でもない。唯はその事実を知らない。
『彼か』
「ええ……どうです?」
『男性器退行は数値内だ……今使用しているモノにはナノマシンレベルを上げている』
「ハイペースですね」
『他のエージェントは複数抱えているから検証や解析に時間がね、君はじっくり出来るから好きだよ』
恐らく同性に対する恋愛感情が芽生えている筈だ。明は楽しそうに泳ぐ唯の姿を見つつも思う……この研究は何れは先進国で起こり得る問題を解決するための手段になるだろう、倫理問題もあるが異を唱える奴ほど現実を理解出来ない愚か者だ。
『例の検証もしたいのでアシスト頼む』
「はい」
明は通信を切る。
「(試す訳ね……全くこんな方法を取らざる得ない状況になったの誰の責任かしら?)」



数時間後、存分に泳いだ唯はスポーツ医の診察を受けていた。身体の痛めた訳でもないが明の好意で各部を診て貰っている。因みに彼の服装は検査服と下着のみだ。
「問題は無いね、陸上の長距離走しているって聞いたが膝や足にも異常は見られない」
「案外多いの、この時期に身体壊してね……」
「最近は改善してますよ……御堂川さんの現役時代に何人か有力だった逸材が無理なトレーニングやケアの怠りで選手生命が終わらせた事で国も真剣に取り組む様になりましたから」
「へぇ、格闘系だけじゃないんだ」
唯は兄が競泳を辞めた理由は知らないがもしかすると兄の周りにもそんな事が起きたかもしれないと思った。
「ファ……んむっ」
唯は欠伸をする……ここまで泳ぐと眠たくなる事は彼も知っていたが急激に眠気により唯は寝てしまったのである。すると法定伝染病疑い患者に接する様な完全防備の服装をした男達が入ってくる。
「慎重にね……うふふっ♪」
明はその笑みを男達に投げかけるも彼らは会釈するなり唯をストレッチャーに載せた。



唯はそのままラボでも最も厳重な場所に運ばれる。実はこのホテルは密かに政財界要人向けの極秘シェルターのカモフラージュだ。まあその後は色んな事情により用途を変えて使用している。それが国家存続、否日本人と言う人種を存続させる為の極秘計画……バレたら今の内閣所か政権与党すら消滅するほど倫理観を欠けた計画だ。日本は高度経済成長を経て女性の社会進出を進めたがこれが晩婚化、高齢出産へと繋がりさらに少子化を招いた。更に同性愛の問題も見過ごせなくなり、日本政府は性同一障害の男児を女児に変える事にした……例え本人がカミングアウトしなくても将来的には独身を通しかねない。その計画は既に進んでおり唯は第二ブロック計画のモルモットの一人だ。
「No007以来だな、短期間でありながらもここまで安定しているのは」
「全く、あの子は凄いな。恋人が競泳選手生命を断たれ危険ドラックに手を出し、それを隠す為にその子になりすましているのだからな……」
防護服に身を包んだ学者たちの会話を明はその厳重な場所が見渡す事が出来る部屋からインカムにて聞いていた。
「(私は産まれた性に違和感を感じていた……それを理解してくれた明には感謝していた)」
本来の自分は失踪したと言う事になっている。
『間もなく精神操作プログラムを作動させます』
唯の頭に器具が嵌められナノレベルの針が頭部に射し込まれる。初期的な女装を始めるだろう。



唯は別室にて目が覚める……そして目の前に置かれた衣類を手に取り着る。同世代の女児が穿くショーツを手に取り足を通す、そしてスポーツブラを装着……更に女児が着る体育用シャツを着て最後にブルマを履いた。その模様は余す事も無くカメラに記録された。
「成功したな」
「Dr……」
明の言葉にDrは思う……。



岬 海はPCにてある週刊誌の記事を検索し違和感を感じた。やはり御堂川 明の恋人である工藤 アキラは失踪している。その記事は明を取り巻く面々の不祥事が明らかになり、バッシング記事が溢れていた時期で五輪代表選抜がかかる大会を辞退を発表した直後だ。
「工藤 アキラは確か身寄りが居ないからな」
「こんな噂もある御堂川は危険ドラックを服用したってな」
海は今でも連絡を取り合っているコーチの言葉にピンと来た。

kyosuke
2015年06月24日(水) 12時35分08秒 公開
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