奇祭
朝、目が覚めると、
「何よこれ・・・」
パジャマが破れてしまったため、下着しか身に着けていないのだが、
そのため、鏡に映っている自分の変わりようをはっきりと確認でき、
肩に触れる程の長さだった髪の毛が短くなり、
股間では見慣れないものが盛り上がって、
同じ水泳部の水沢先輩に比べれば華奢だが、筋肉もそれなりについており、

「紗香、うるさいわよ。」
すると、母さんが部屋に入って来てしまうが、
「あなた、ちょっと来てよ。」
母さんは平然と数日前に足を骨折した父さんを呼んで、

「娘、じゃなかった息子よ、父に代わって立派に役目を果たせよ。」
「もしかして、私に祭りに出ろって事?」

今日は町内の祭りなのだが、祭りには男だけしか参加できない上、
法被と褌以外は何も身に着けない事になっているのだ。

「嫌だ、恥ずかしいよ。」
「今のお前は正真正銘の男ではないか。」
「そうよ、男になった以上、絶対に参加しなさい。」
「母さんまで。」

男しか参加できない祭りに私が参加して大丈夫なのかと思いつつ、
渋々、法被に褌姿で公園に向かうと、 水沢先輩に声を掛けられ、
「吉野じゃないか。」
「せ、先輩・・・」

先輩は私が男になっている事など気にかけず、普段と同じように接し、
「お前も来ていたのか?」
「は、はい。」

私達が受付に向かうと、
「あ、あの・・・」
「君、司の知り合いのようだけど、見かけない子だね。」

皆の前で本当は女だなんて言える筈も無く、どうすれば良いかと悩んでしまうが、
先輩が受付を担当する男性に、
「水泳部の後輩だよ、姉さん。」
「姉さんって・・・」

戸惑う私に、
「実は姉さんもお前のように男になっているんだよ。」
「そ、そうだったのか。」

ほっとしたのも束の間、
「せ、先輩、あれって・・・」
「これからあれを担いでいくんだ。」
「あ、あれをですか?」

私達の目の前にある巨大な棒のようなものは、
明らかに男性の股間でぶら下がっているものにそっくりであり、
一瞬、後ずさりしてしまうが、

「吉野、一緒に頑張ろうな。」
「そ、そうですね。」

いざ私達を含め数十名で担いでみると、ずっしりと重みがあり、
私は勿論、先輩達も足がふらつきそうになりながら、
何とか公園の西にある山を目指して少しずつ前へと進んでいくが、
途中、急な坂や足場が良くない箇所がいくつかあって、

「よ、吉野、大丈夫か?」
先輩は滝のように汗を出す私を心配してくれたが、
私は担ぐのがやっとで声を出すどころではなく、
皆も最初は大きな掛け声を出していたが、次第に少しも声が出なくなっていた。

ようやく山頂まで辿り着くと、
小さな子供が通り抜けるのがやっとの大きさの穴に棒のようなものを差し込んで、
「や、やっと終わった。」

疲れがどっと出た私はその場でへたり込んでしまうが、
「吉野、よくやったな。」
「先輩こそお疲れ様です。」

翌日、私は女に戻ったのだが猛烈な筋肉痛に襲われ、
「だ、大丈夫か吉野?」
「だ、大丈夫です・・・」
「そうか?あまり無理するなよ。」

幸い筋肉痛は次第に治まってくるが、
あの祭りのおかげで先輩との距離がほんの少しだけ縮まったように感じるのは気のせいかな。
なーくん
2015年04月07日(火) 19時33分15秒 公開
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